「Oracle CloudでKUSANAGIを動かしてみた」第1回

小澤 昌樹

成長著しいパブリッククラウドサービス市場で、一つのサービスとしてOracle Cloudを利用し、超高速WordPressマシン「KUSANAGI」を動かす過程が綴られています。オラクル社が提供するOracle Cloudは、非常に多くのエンタープライズシステムで採用されているデータベースからオンプレミスをクラウドサービスへ移行させる流れを実現しています。ここではオンプレミスで稼働しているOracleデータベースを、そのままの構成でクラウドに移行し、管理性や可用性、障害許容度などもすべて同じにできる特長を持つOracle Cloudについて紹介しています。

1. はじめに

こんにちは、株式会社シオラボの小澤です。よろしくお願いいたします。

さて、国内パブリッククラウドサービスの市場規模は6,600億円と言われ、年間平均成長率も20%を超える数値で推移していると言われています。市場規模が年間1兆円を超えるのも、それほど遠い将来ではないでしょう。従来型のオンプレミスからクラウドサービスへIT基盤の移行が堅調に進んでいることから、国内パブリッククラウドサービス市場は高い成長を遂げています。さらに、デジタルトランスフォーメーションやRPAが高い注目を集めていることも後押しとなって、今後も成長が続くと予想されています。これを読まれている多くの皆さんも、日常的にパブリッククラウドサービスを使われているのではないでしょうか。

本コラム「Oracle CloudでKUSANAGIを動かしてみた」では、成長が続くパブリッククラウドサービスの一つである「Oracle Cloud」を使って、超高速WordPressマシン「KUSANAGI」を動かす過程を綴っていきます。通常のWordPressサーバを約10倍の速さにブーストさせるKUSANAGIは、パブリッククラウドと融合し、どのような動きを見せるでしょうか。楽しみですね。

2. Oracle Cloudとは

(完全で、統合されたクラウド / Oracle Cloudホームページ)

まず、これから使用していくパブリッククラウドサービスの「Oracle Cloud」を紹介しましょう。

Oracle Cloudは、その名の通り、オラクル社が提供する、企業向けのパブリッククラウドサービスです。Oracleと言えば真っ先に思い浮かべるのはデータベースですよね。Oracleデータベースは、エンタープライズシステムでの導入シェアが非常に高く、特に、ミッションクリティカルな大規模システムで多く採用されてきました。そのシステムの多くはオンプレミスで構築されていますが、オンプレミスからクラウドサービスへというIT基盤の変化に従って、データベースそのものをパブリッククラウドへ移行する流れも当然でてきます。しかし、いざ移行するにあたって、それまで使っていたデータベースシステムを変更することは大きなリスクです。パブリッククラウドに移行しても、それまでオンプレミスで培ったノウハウを活用でき、使い慣れた操作性を担保できるのであれば、大きなメリットを得られます。さらに、オンプレミスとクラウドで同じアーキテクチャにできるのであれば、クラウド環境独自の設計が必要になるということもありません。

これらを実現しているのがOracle Cloudです。オンプレミスで稼働しているOracleデータベースを、そのままの構成でクラウドに移行でき、可用性、管理性、障害の許容度などを、基本的にすべて同じにできるという大きな特長を持っています。

3. Oracle Cloud が提供するサービス

(あらゆるビジネスニーズに対応するオラクルのクラウド / Oracle Cloudホームページ)

Oracle Cloudがパブリッククラウドで提供しているサービスはデータベースだけではありません。インフラからミドルウェア、サービスまで、アプリケーション(SaaS)、プラットフォーム(PaaS)、インフラストラクチャ(IaaS)の全領域をカバーする50を超える豊富なサービス群が提供されています。提供されているサービスにはどのようなものがあるのか、その一部を紹介しましょう。

  • インフラストラクチャ(IaaS)

インフラストラクチャ(IaaS)は、「Oracle Cloud Infrastructure」として、コンピュート、ストレージ、VM移行などを提供しています。

  • コンピュート

コンピュートリソースを提供するサービスです。クラウドを象徴するサービスとも言えます。スモールスタートで始められる仮想マシン環境から、高い性能を必要とするシステムに向けたベアメタル環境まで、ビジネス要件にあわせた選択ができます。また、エンタープライズでは、高い性能とセキュリティ、可用性を実現し、オンプレミス環境をそのままクラウドに移行することができます。今回、KUSANAGIを動かすにあたって、使用するメインのサービスです。

  • ストレージ

データ保管に関するサービスです。業界標準のオブジェクト・ストレージからアーカイブ・ストレージまで、データ保存の目的や用途に応じたサービスが用意されています。例えば、オブジェクト・ストレージは、クラウドやオンプレミスのデータのバックアップに最適です。アーカイブ・ストレージは、非常に低コストで、長期保管が必要なデータの格納に最適です。

  • Ravello Cloud Service

オンプレミスのVMware環境を、仮想マシンの変換やネットワークの再設定等の変更を一切せずに、パブリッククラウドに移行させることができるサービスです。東京リージョンを含む全世界数十カ所で利用できます。

  • プラットフォーム(PaaS)

プラットフォーム(PaaS)は、アプリケーション開発者の生産性向上、高度なデータ管理、堅牢なセキュリティ確保、効率的な運用管理、ビジネス分析、コンテンツ管理、プロセス管理など、幅広いサービスを提供し、イノベーションとビジネス変革を推進するものです。

  • データベース

ビジネスにおいて重要なデータウェアハウスやトランザクション・アプリケーション、ビッグデータ分析など、あらゆるデータ管理のニーズに対応したサービスが用意されています。Oracleデータベース環境をクラウドで提供する「Database Cloud Service」は、Oracle Cloudの代表的なサービスです。

  • アプリケーション開発

Java EEをベースとしたアプリケーション開発・実行環境である「Java Cloud Service」や、JavaSE、PHP、Node.js、RubyなどをベースとするWebシステムをクラウドネイティブに開発・運用できる「Application Container Cloud Service」などが提供されています。

  • インテグレーション

オンプレミスとクラウド間で、データベースのデータをリアルタイムに複製する「GoldenGate Cloud Service」や、簡単に独自ワークフローを実装できる「Process Cloud Service」が提供されています。

  • Oracle Cloud at Customer

Oracle Cloudと全く同じ環境を自社のデータセンターに設置できるサービスです。自社にデータセンターに設定することで、セキュアに運用しながら、クラウドメリットも享受したいといったニーズに応えるサービスです。

今回は、Oracle Cloudの概要と、Oracle Cloudが提供するサービスの一部を紹介しました。Oracle Cloudが提供するサービスは豊富なので、すべて紹介できないのが残念なのですが、あらゆるビジネスニーズに対応できるよう、多種多様なサービスが提供されていることを理解いただけたのではないでしょうか。

さて次回は、Oracle Cloudの課金システムについて説明し、アカウント登録へと進んでいきます。KUSANAGIを動かすまで、もう少し手順を踏む必要がありますが、楽しみにお待ちください。

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