ハイパーオートメーションの定義と正しいあり方

ハイパーオートメーションの定義と正しいあり方

RPAベンダーの言うハイパーオートメーションとは

RPAベンダーのハイパーオートメーションは基本的に以下フローに集約されます。

これはあくまで現行フロー・システムをそのままRPA化することに主眼が置かれています。
一部、ユーザーとのコラボレーションツール(UiPathならAction Center、Blue PrismならInteract)が提供されていますが、基本となるフローはそのままです。

DXを目指してのRPA・ハイパーオートメーションの導入であれば、まずは業務上ボトルネックになっているシステムに着眼し、クラウド化などの手法で更新していく必要があります。
まあ、確かにボトルネックになっているシステムを直接操作しなくてよくなるのはRPAのメリットではありますが、それはただ作業を楽にするだけであり、企業価値を高めて、継続性のある会社にするという観点から言えば、効果は低いと思われます。

RPAベンダーは、「DXしましょう、ハイパーオートメーションしましょう」とは言いますが、「システムを更新しましょう」とは言わないです。
これはシステムを更新すると、その新システムの中の機能で自動化が進んだり、APIが利用できることなどによりiPaaS(複数のクラウド環境上に分散している業務システムを統合するためのクラウドサービス)などで自動化ができたりするので、RPAを導入する必要がなくなったりします。
ライセンス販売が主たる収益源になっているRPAベンダーからすれば、新規導入やアップセルこそ顧客に求めているアクションであり、システムの更新ではないためです。

誤解しないでいただきたいのは、RPAを否定している訳ではありません。RPAは自動化の観点では大きな効果を生み出します。ただ、もっと高い視点で効率化しましょうということです。

Gartnerがトップトレンドとしているように、ハイパーオートメーションの時代ではありますが、RPAベンダーの言うハイパーオートメーション製品群を使う必要はなく、各会社の状況にあったハイパーオートメーションの取り組みをしていくのが重要と考えます。

ハイパーオートメーションの前準備

では、ハイパーオートメーションに必要な前準備について整理していきたいと思います。

マスタの整理

データをうまく活用するためには、そのデータ各項目の意味が統一されている必要があります。
同じ商品でも複数の商品コードがあったり(よく同一商品でも取引先によってコードを変えている企業がありますが)、あるコードを軸に売上推移などを見える化しても正しく表現できない場合があります。

このように、マスタを整理することは非常に大事ですが、非常に面倒・大変です。バラバラなものを整理していくのは非常に根気のいる作業で、またすぐに成果に結びつかないので誰もやりたがりません。

ニュースでデジタル庁がデータ整備を中断したとのことですが、まさにその大変さを表しているニュースかと思います。

デジタル庁の「事業所」データ整備事業が中断、目玉政策が実現困難と判明した経緯
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01157/042800060/

よくERP更新プロジェクトが立ち上がると、マスタ整備チームも併せて立ち上げられるパターンが多いですが、マスタ整備は常に整理しつづけることが重要だと考えています。
さらにいえば、取引先や業界の中でのマスタができあがるとさらに効果が高くなるため、各業界でも日々取り組んでいただきたい内容です。

クラウド化

クラウド化の流れはもう止められない流れと言えます。
ハイパーオートメーションの観点からもサーバー・サービスをつなぎやすい位置にあることは非常に大事です。
これまでは企業システムといえば、契約したデータセンター内に物理サーバーを設置してOSやミドルウェアをインストールして、業務アプリケーションをセットアップするという流れで、外部との接続を増やす場合もかなりのネットワーク設定が必要でした。
AWSやAzureなどのクラウドサービスを利用すると、簡単に他のシステムとの接続設定ができたり、また追加で必要となるサーバーも簡易に増設することが可能です。
ハイパーオートメーションを推進していくと、データの流れが随時増えていくので、臨機応変に構成を変えられるクラウドサービスを利用することが求められます。

SaaS利用とポストモダンERP化

「ポストモダンERP」という考え方があります。
上記「クラウド化」はコンピューティングリソースの観点でしたが、こちらではクラウド上で展開されている各SaaSを組み合わせて利用していくというものです。
日々ニュースを見ていると、SaaSで各サービスがどんどん機能追加をしたりなどより良いものになっていくのが分かるかと思います。
それらを利用しない手はありません。

今までは1つのERPの中で業務を完結させようとするあまり、巨大なERPができてしまい、機能追加やメンテナンスがしにくいERPの反省として提唱されてきました。
また、システムが分断されていることは悪いことのように言われていましたが、それは繋がらないシステムは悪いですが、分散してもAPIなどで繋がり成長するシステムは良いものです。

AI活用の流れ

ハイパーオートメーションのコア技術の1つがAI活用です。
AIにより人が判断していたことを代行できたり、さらに人でも判断できないことが判断できるようになったり(どこの特徴量を見ているのかわかりませんが)、自動化の流れを大きくしたのがこのAIという技術です。
総務省が公表している「令和元年版情報通信白書」によると、日本のAI導入率はわずか「39%」です。これに対し、海外の導入率は中国85%、アメリカ51%、ドイツ49%、フランス49%、スイス46%、オーストリア42%です。(直近PwCの調査では、だいぶん巻き返していると聞いています。)

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd112220.html

AIやAIができること自体の認識はだいぶん広まってきましたが、じゃあそれを自社業務でどのように利用できるかと考える企業はまだまだ少ないのが現状です。
無理に導入する必要はありませんが、しっかり自社業務×AIを考え、新しい展開を検討していく流れや意識改革が必要となります。

紙業務の廃止とデジタル化

グローバルな数字ではありますが、請求書の量は現在約5,500億枚であり、2035年までに4倍になると予想されています。
新型コロナウィルス対策での蔓延防止のため、在宅勤務が推奨され、紙業務についても大きくデジタル化が進みましたが、まだまだ紙業務は残ったままです。
紙業務のやっかいなところは、定型フォーマットでないため、データ構造(合計金額の印刷場所など)がそれぞれ異なり、再利用しにくいという点です。
AI-OCRによりある程度自動化できますが、業務フローの中に物理的紙があることで、ハイパーオートメーションの目指す自動化のボトルネックになってしまいます。

まずはEDIなどでデータでやりとりをする仕組みをつくることが大事です。
このあたりはPeppolという仕組みや、大日本印刷のEDI事例を含めて別途紹介します。

AS400などレガシーシステムのWeb化

ブラウザベースのアプリケーションであれば、RPAやブラウザ自動化の仕組みで自動化できます。
またWindowsアプリケーションもRPAで自動化できます。(認識できる項目に限り)
しかし、1970年ごろから構築されてきたIBM i(AS/400)などのシステムはCUI(Charactor User Interface)であり、項目の入力やデータ抽出がしにくいという問題があります。
各RPA製品にも補助機能はありますが、あくまで補助機能であり、自動化しやすいかといえばそうではありません。

まあ、本来であれば廃止しましょうということですが、IBM i(AS/400)で作られているシステムは基幹系システムである場合が多く、簡単に移行できないという状況もあります。
そのため、最近でCUI画面をGUI化(ブラウザ操作可)とするようなソリューションも多くありますので、まずは自動化しやすいInterfaceにしていくことが必要です。

https://www.officequattro.com/jpn/software/contents/autoweb/index.html

ハイパーオートメーションを進めていくという考え

結局は、ツールは何を使って、どのようにハイパーオートメーションを進めていくのが良いかという話では、「できることから1つずつ積み立てて、新しいことにもチャレンジしていく」と言う他ありません。
ただ、これまで述べてきたように「方向性」は見えていると思うので、そこに向けて1歩1歩手を打っていきましょう。継続的に、持続的に。

でなければ、前回の最後に「2000年以降、フォーチュン500社の52%が倒産、買収、もしくは消滅しました。」とお伝えしたように、時代に合わせて新しいことを取り組んでいかないと企業の存続が脅かされてしまいます。
ハイパーオートメーションは企業存続に高く寄与すると考えられており、危機意識をもって、取り組んでいく必要があります。

次回は紙業務に注目して、AI-OCRやハイパーオートメーションでの取り組みについて述べていきたいと思います。

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