クラウドやCMSを取り巻くグローバル市場の状況 : AlmaLinux Day、CloudFest参加レポート

クラウドやCMSを取り巻くグローバル市場の状況 : AlmaLinux Day、CloudFest参加レポート

こんにちは、プライム・ストラテジー取締役副社長、KUSANAGIのプロダクトマネジャーの相原です。

ドイツで開催されたAlmaLinux Day: GermanyとCloudFest 2024に参加してきました。このコラムではそこで見たクラウドやCMSを取り巻くグローバル市場の状況についてレポートします。

AI関連はやはり熱い

CloudFestはインフラの基盤となるサーバ機器からホスティングサービス、様々な分野に特化したサービスまでクラウドに関するあらゆるサービスが集結した、文字通り”CloudFest is the #1 internet infrastructure event in the world, connecting the global cloud computing industry”「世界ナンバーワンのインターネット・インフラストラクチャ・イベント」でした。

その中でもAI関連はやはり熱く、Intelが Diamond+ Partnerとして参加し、3月18日には「Intel AI SUMMIT」が開催されました。AlmaLinux Day、WP Dayと同日開催だったため、参加はできませんでしたが、それ以外にもAI関連のセッションが数多く開催されていました。

AIをどう使っていくのか

生成AI が世界中で注目されていますが、
「AIをどのように自分たちに役立てるのか」
「AIは自分達の課題の何を解決できるのか」
ということが、本当の活用に向けての課題となってるということでした。

日本でも同じ課題に直面していると思います。AIを使うことと、自分の課題が解決することとの結びつきを直感的に感じてもらえるようにしていくことが、AIやAI関連サービスを提供する企業に求められていることであり、今後のAIの発展と普及にも大きな影響を与えていくのではないでしょうか。

AIは正しいのか

もう一つ「AIは正しいのか」という問題もあります。質問すればそれらしい答えを生み出してくれる生成AIですが、業務の中ではその答えが正しいのか、ということも問題になります。

Intel のブースで、「AIの確からしさ」を検証するサービスの話を聞きました。

AIが普及してきたからこそ、新たな課題が生まれ、それを解決するサービスが生まれる。技術もサービスもこのように進化していくのだと思いました。

NVIDIAとSupermicroのスポンサーでソーシャルイベントが開催されたストリート

現地サポートで巨人に対する優位性を保つヨーロッパのIaaS市場

ヨーロッパのIaaS(Infrastructure as a Service)市場も非常に競争が激しく、いかにコストを抑えるか、高いレベルのサービス(SLA)を提供するかでしか差別が計れなくなっている反面、ヨーロッパではヨーロッパに拠点を置く企業を優遇する市場の特性と、サービスをしっかりと理解している現地でのサポートが充実していることから、AWS、Azure、GCPといった巨人に対する優位性を持っているそうです。

ベアメタル、プライベートクラウド、パブリッククラウドなど純粋なインフラに注力していて、WordPressを提供することは重要視していないとのことでした。

グローバルではVPSサービスもサポートを重視

アメリカやヨーローッパでは、個人がVPSを立ち上げて自分の責任で運用するのではなく、ホスティングサービス提供側が一定のサポートを提供することが重視されており、その傾向は年々進んでいるようです。

日本では、制作会社やわたしたちのような保守サービスを提供する企業がその役割を担っていますね。

WordPressサイトを作るのは制作会社(エージェンシー)

AlmaLinux Dayが開催された3月18日はオープンソースに注目する日というコンセプトでWordPressのイベント「WP Day」も開催されました。CloudFestというイベントの性質上、ホスティング事業者やサービス提供者に向けたセッションが中心でした。

セッションの中でWordPressに関する興味深い数字がいくつかあげられましたが、その中の一つに「WordPressサイトの60%はエージェンシーが制作している」というものがありました。

日本では、ユーザーや顧客がサーバを借りて直接WordPressサイトを作るケースが多いですが、エージェンシー(制作会社)が作成することが主流になってきているそうです。

様々な分野で責任の分離が進み、変化しつつあることを感じました。

WordPressをUX高く提供するのはホスティング事業者の重要な役割

Webサイトの表示が遅いとユーザーが離脱してしまい、二度とそのサイトに戻ってこないように、WordPressに触れる入口となるホスティングサービスでWordPressが遅い、使いにくいと感じてしまえばユーザーはWordPressから離れてしまうでしょう。

だから「情報の発信手段が多様化する中で、WordPress市場を拡大していくためには、WordPressをUX高く提供することがホスティング事業者の重要な役割である」である、という話がありました。

これはとても大切な考えであり、「WordPressをUX高く利用できるようにする」ことはホスティング事業者はじめ、WordPressに関連する企業が取り組むことができるWordPressへの貢献の方法のひとつであると思います。

WordPressはホスティング事業者の差別化の鍵

競争が激しいホスティング市場で、WordPressに特化することでサービスを充実させ、コスト削減し、差別化をはかるために、「WordPress as a Service」という考え方が生まれ、ホスティング事業者の参入、移行が進んでいるそうです。

WordPressがたくさん使われているからWordPressサービスを提供するという状況からから一歩進んで、WordPressがホスティング事業者の差別化の鍵となるものとして期待されているのです。

WordPress as a ServiceとVPSの使い分け

SaaSで提供されるサービスは、サービスが人に合わせるのではなく、人がサービスに合わせることで成り立っています。

WordPress as a Serviceも同様で、ユーザーは質の高い環境とサポートを手にいれるかわりに、WordPressの標準的なお作法で制作することや、導入プラグインの制限など、一定の「自由度」が制限されます。前者が重要であると考えるユーザーはWordPress as a Serviceへ移行します。

反面、個別に複雑な課題をもつユーザーは、VPSなどを活用し、制作会社や保守サービス提供会社などと連携してWordPressサイトを制作運用します。

市場の変化はユーザーの要求に従った結果

このようなグローバル市場の変化は、「ユーザーが求めるサポート」にどのように対応していくかを追求した結果であると感じました。

日本という市場の特性があるので、グローバルの状況がそのまま反映されるとは限りませんが、「ユーザーが求めるサポート」「ユーザーが求める課題解決」のためにサービスそして市場の変化は進むでしょう。

裏返していえば、「ユーザーが求めるサポート」「ユーザーが求める課題解決」のために製品やサービスを開発、提供し、市場を変化させていくことがサービス提供側に求められていることだと思います。

人々はサイトをhaveしたいだけ

最後に印象に残った言葉を。

人々はサイトをhostしたいのではない。haveしたいだけ

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